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森の中を歩くと、ふかふかして湿ったスポンジの上を歩いているように感じませんか?
森林の土壌には細かいすき間が多くあり、そこに水分や空気が溜まっているので、地表面がふかふかしているのです。
森林の地表面には落葉・落枝や動植物の糞や死骸などが堆積し、それらをミミズなどの土壌動物や微生物が分解することで、【腐植】という有機物になります。
腐植を多く含んだ森林の土壌は、菌から出る粘着物質やイオンの働きなどで粒子同士がくっついて大きな固まりを形成しています。
それらは粒子の固まりが大きいため固まりと固まりの間にたくさんすき間(孔隙)ができてしまいます。
また動物の通り道や樹木の根が腐ってできた管状の穴など、森林の土壌中には無数の大小のすき間が存在します。
森林に降った雨は、このすき間に浸み込み、一時的に溜まります。1つ1つのすき間は微細でも、森林全体ではとても大きな浸透力・保水力となり、水を蓄えてくれます。
この浸透能力は、森林は都会の歩道よりも約20倍もの能力があると、大学などで研究されています。林野庁では、日本の森林2500万haの総貯水量は1894億トンあり、これは日本にある約2600のダムの総貯水量202億トンの9倍にも達すると試算しています。
土壌に蓄えられた水分は、その後一部は蒸発し、一部は樹木に吸い上げられ、残りは徐々に地下に浸透していきます。このときに大小のすき間を通過するので、不純物はろ過されて濁りのない澄んだ水になり、雨水に含まれる窒素やリンなどは土壌中のマイナスイオンに吸着され、岩などから溶け出したミネラルを適度に含んだおいしい水になります。
地下に浸透した雨水は、時間を経て徐々に河川や湖に流れ出ます。そして一部はさらに浸透して地下水として滞留します。このような森林の働きによって、河川などに流れ出る水量は降雨の有無に大きくは左右されず、年間を通じて一定しているのです。
水が無ければ生きていくことができない我々にとって、この保水力こそが、山からの最大の恵みであり、それを支えているのは、たくさんの樹木やそこに生きる多種多様な生物の食物連鎖なのです。湖やダムだけが水を貯めてくれているのではありません。
安定した量のおいしい水を供給してくれる森林が無ければ、わたしたちの暮らしはとても不安定なものになってしまいます。
森の木を使い、山に手を入れ、自然が更新することによって、暮らしが安定するのではないでしょうか。