吉田の“のうがき”

HOME » 吉田の“のうがき” » 森から学ぶ家づくり » 

大胆な間伐によって蘇る森

2012.03.15 | 森から学ぶ家づくり | コメントなし »

水の流れに注目し持続可能なコミニュティーを復活させるという
新聞記事の中に、強度間伐の話がありました。
山を守る、木を使うということを改めて深く考えずにはおれません。
ご紹介したいと思います。

『大胆な間伐によって蘇る森』

強度間伐の森

三重県大台町旧宮川村地区。清流宮川の流れるこの地に、
ちょっと変わった森を見つけた。
細い木がまばらに立ち、まわりには切り株が残っている。
少し前まで多くの木が生えていたようだ。
藤原康孝はこの土地に生まれ育ち、20歳で父親に弟子入りし林業家になった。
現在、藤原林業社長として、放置され荒廃した山を復活させている。
藤原は、強度間伐という手法をとる。普通の間伐は一定面積内に立つ木の
3割程度を切るが、強度間伐は7割を間引いてしまう。
だから強度間伐後の人工林は閑散としている。太陽光が入るようになるため、
林内は明るいが、下草はない。エンピツのように細い木がポツリポツリと立っているだけだ。
「父もかなり間伐していた。父が木の根本にナタで傷をつけていく。
この木を切れという合図だった。
私はチェーンソーンで印のついた木を次々に切っていった」
1日に1200本以上切り倒したこともあるという。当時としては異例の間伐だった。
「いまから振り返ってみると5割くらいの間伐だったと思う。
それでも数年経つと、再び枝がぶつかりあってしまい、木は成長を止めてしまった。
これでは意味がない。もっと強く間伐しなくてはと思った」

藤原は20年ほど前から、7割の強度間伐を行うようになった。
「ここまで間伐すると、木がまともに風を受けて倒れてしまうという人がいるが、
そんなことはない。間伐してあると、木がまんべんなく日を浴びるので、
下のほうにも枝が生えるようになる。
風が吹くと枝が下から上へと巻き上げられ、幹へのダメージを減らす。
通り過ぎた風は、反対側の枝が上へと逃がす」
枝がF1マシンのフロントウイング、リアウイングのように、風を自在にコントロールしているわけだ。
また、樹木自体も風を受けて強くなるという。
「木は強い風に吹かれると、それを記憶し、しだいに硬くなってくる。だから折れることはない」

●人口針葉樹林の保水力を回復させる

強度間伐を行うと、真っ暗で、地面に草が一本も生えていなかった森が、どう変わっていくのか。
「7割の木を切ると地面にまんべんなく光が入り、草木が生えてくる。もともとここに落ちていた種、動物の糞に交じっていた種が芽を出す。わざわざ苗木を植えなくても、太陽光を入れれば自然と生えてくる」

間伐後すぐに、山椒、ドクダミ、ムラサキシキブなどが生え、剥き出しだった地面は緑で覆われる。冬になるとこうした草はいったん枯れるが、土壌の養分となり、春になるとさらに多くの芽吹きを
うながす。ちなみに、スギやヒノキの葉は、いくら落ちても土壌の養分にはならない。
強度間伐から3年が経過した森を歩いた。
クスノキ、カシ、ウツギ、クワ、カツラなどが生えていた。カツラは水のある土地に生え、
しっかりと根を張るため、森の「砂防係」として知られる。

かつては雨が降っても土に染み込むことはなく、山肌をつたって下へ下へと
流れていくだけだった。ところが草木が生え、土壌が変わると、水がわき出した。
流れは次第に大きくなり、いまでは水の流れる谷になっている。

強度間伐が人口針葉樹林の保水力を回復させることは、研究でも実証されている。
筑波大、名古屋大、京都大、信州大などの研究者でつくるチーム
(代表、恩田裕一・筑波大準教授)は、東京、三重、高知、長野の森林で、
下草の量と、土壌へしみこむ水の量の関係について実験を行った。
その結果、裸地に近い状態での浸透能力は1時間に20ミリ程度だが、
地表が下草で50%以上覆われると150ミリ近くまで高まることがわかった。
さらに、20メートル四方で人工林の間伐率を変えて照度を測定したところ、
下草が生えるには7割の間伐が必要なことがわかった。
つまり、森の機能を回復させるには、一般的に行われている3割程度の間伐では不足で、
強度間伐が有効といえる。
強度間伐から10年が経過した森を歩いた。大きくなったスギやヒノキに交じってさまざま木々が適度に茂っている。なかに8メートルほどに伸びたトチもあった。
ここでも轟々と音を立てて水が湧きだす。わずか30メートル四方の人工林が蘇っただけなのに。植生が豊かであればあるほど森は豊かになり、水を育む力も強くなる。

いまこの場所は、夏になるとゲンジボタルが飛びかっている。
「特別なしかけをしたわけではない。太陽の光をいれただけなんだ。
しかし、太陽は私たちの想像を超えた絶大なる力をもっているんだ」と、
藤原はしみじみ語る。

●森全体に大きな命を吹き込む昔ながらの林業

藤原のやり方は他の林業家から見ると非常識と映る。
「あんなものは林業ではない」とさえ言われることもあるのだという。
杉を残してこそ林業家。どんどん切るなんてとんでもない、というわけだ。
「強度間伐でいい森をつくっても、このやり方ではすぐには採算が取れないのも
理解が得られる理由。補助金が出るのは3割の間伐まで。7割も間伐したら大損になる」

労力は多いし、採算も合わない。十分な太さがない間伐材の価格は二束三文だから、
切った木はその場に置いてくる「切り捨て間伐」が林業の主流になっている。
山から下ろされる間伐材は、全体の1割にも満たない。
実際人工林を歩くと、切り捨てられたたくさんの木が横たわっている。
だが、土に光が当たらないため、草木は生えてこない。
「間伐材さえ出せば、一瞬にして下草は生えてくるんだ」

藤原は森全体に大きな命を吹き込む、昔ながらの林業にこだわり続ける。
「山師は百年先の森を考えて動くもの。どちらがよいかは100年後に明らかになるだろう」

コメント

CAPTCHA


インターネットからのお問い合わせ

〒550-0027 大阪市西区九条3-22-1 株式会社フォレスト・ハウス 健康住宅/自然素材・無垢材の家づくり

お電話でのお問い合わせはこちらから
TEL.06-6581-1212 FAX.06-6584-1519

標準 特大